藤井 彩野(ふじい あやの)

2004(H16)年3月 恵泉女学園大学 人文学部 国際社会文化学科卒
2005(H17)年6月 (株)三松 勤務
10月 つまみかんざし彩野の屋号で販売を開始(創業時まで勤務継続)
2006年(H18)4月 恵泉フラワースクール 勤務
2016年(H28)1月 つまみかんざし彩野 開業
8月 関東経済産業局「Next Crafts Generation」千葉県代表
2017年(H29) 2月 関東経済産業局 地域産業資源活用事業認定
2018年(H30)3月 千葉県指定伝統的工芸品「江戸つまみかんざし」製作者認定
6月 LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2018匠 選出

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つまみ簪の世界に入ったきっかけ

元々は海外志向で、いずれは海外で働きたいと思っていましたが、大学在学中の海外経験から日本文化に興味を持ちました。帰国後に目にした江戸つまみかんざしのパンフレットをきっかけにワークショップに参加し、作る楽しさと、その美しさ、繊細さに魅了されました。
その後、職人の後継者不足などの話を聞く中で、日本伝統の装飾技術を絶やしたくないという想いから、卒業後に独学で技術を身に付け事業を開始しました。
ただ最初の頃は、作品制作と自ら営業をして販路を広げる他に、着物屋やフラワーアレンジメント教室のアシスタントなど、制作のプラスになりそうな仕事選んで掛け持ちしていました。

藤井さんにとってつまみ簪の魅力

平面の生地が、ピンセットとでんぷん糊の力だけで立体になり、主に2種類の技法で様々なモチーフを表すことができるところが魅力です。 また、同じデザインでも、色合いや素材を変えると印象がガラリと変わるところも面白いと感じます。

つまみ簪とは(概略説明)(歴史と現状)

歴史

諸説ありますが、江戸時代の初めに京都で作られていた「花びら簪」の一つの技法が、江戸に伝わり発達したのが起こりとも言われています。
江戸時代中期になると、武家だけでなく町娘の間でも流行し、日常的に使うヘアアクセサリーとして少女たちの日本髪を彩ってきました。
また参勤交代の際の江戸土産として重宝されたという話も残っています。

現状

明治時代を境に日本人のライフスタイルが欧米化したことにより、徐々に和装や和装小物の市場は減少し、今日ではつまみかんざしの技術を受け継ぐ者が全国で20人以下とも言われています。
現在つまみかんざしが使用されているシーンは、歌舞伎や文楽、舞妓などの伝統芸能や、七五三や成人式など女児の晴れの日を祝う伝統行事の際が多く、日常使いからはかけ離れたイメージとなっています。
東京都と千葉県の指定伝統的工芸品とされています。

つまみ簪の特徴

まず薄いシルクの生地を小さい正方形に裁断し、ピンセットを使用してつまみながら折りたたみ一片の花びらを作ります。それをでんぷん糊の中に並べていき、一定時間経ってから別に作っておいた土台の上に葺(ふ)いて、花や鳥、蝶などのモチーフを作っていきます。
この技法を「つまみ細工」といい、その「つまみ細工」でできたかんざしのことを「つまみかんざし」と呼びます。
でんぷん糊の特性上、雨などの水濡れには弱いです。

藤井さんにとってのつまみ簪

ひょんなことからこの世界に入り、様々な人との出会いやお力添えによってここまで歩んで来ることができたので、とても感謝しています。
“弟子入り”“修行”などの王道ではなく、ずっと側道を走ってきたからこそ見える景色、できる技法などもあるので、出会ってきた方々とのご縁を大事にしながら、これからも柔軟な思考でこの伝統工芸と共に走り続けていこうと考えています。

製作にあたって注意する事項など

基本的はシンプルな作業の繰り返しなので、一つ一つの作業を丁寧に行うことが肝要です。
・生地を正確に正方形に裁断すること。
正確に裁断されていないと作品の出来上がりに影響します。
・生地の種類やその日の湿度によって、でんぷん糊の硬さや、馴染ませる時間を調整すること。  
毎朝天気予報を確認し、デスクには温度計と湿度計を置いています。
・でんぷん糊が不必要なところに付くと汚れのように見えるため、こまめにピンセットを綺麗にして作業すること。
・できる限り、色が薄い生地から作業すること。

藤井さんの作品の特徴

つまみかんざし

・着物屋での勤務経験があるため、着物の種類やコーディネート、着るシチュエーションを理解した上で、かんざしのデザインや色合いを提案し、制作することができます。
・様々な着物の生地の特性を理解しているので、着物の残布(ざんぷ)加工が可能です。京友禅作家とのコラボレーションなども行なっています。
→参考 https://tinyurl.com/y368wlyh
・和装だけでなく、ウェディングドレスなどの洋装にも合わせられるデザインも得意です。
  →参考 ENISHI http://enishiwedding-tradition.com/

つまみ細工商品

・シルクだけでなく、コットンやレーヨンの素材も使用し、日常使いできるアクセサリーを提案しています。
・異素材である和紙を使ったライフスタイルアイテム(アロマディフューザー)を開発し、伝統工芸の技法をより身近に感じられるような商品を制作しています。
・制作スタップも増えてきたので、私一人ではなく“チーム彩野”として互いにアイデアや意見を出しながら、今のライフスタイルに合う商品開発に注力しています。

現状の課題と今後目指したい方向・事柄など

現状の課題

・制作スタッフの雇用  
一人一人の生活環境に合った働き方や雇用契約をすることで、従来の師弟制度以外の方法で、伝統技術を次世代につなげるやり方が見出せないかを考えています。
・販路開拓  
雇用の話にも繋がりますが、コンスタントにお仕事をいただけるよう、販路開拓は常に重要な課題です。
・作家としての制作活動を通してブランド力を向上させること。  
始めやすい手工芸だからこそライバルも多いため、いかに他と差別化していくかも重要だと考えています。

目指す先

“素敵だなと感じたものが、たまたま伝統工芸品だった。”
“江戸つまみかんざしは知らないけれど、ふと立ち止まって見ていた。”
そんな、つまみかんざしと出会う“きっかけ”になるような商品作りを心掛けていきます。
また、この技術が100年先にも繋がるよう、職人チームとしても進化できるよう精進していきたいです。

ワークショップ開催、など販売も含めた展開(現状と今後)

ワークショップ

・オンラインWSの実施(月3、4回ほど)
・対面WSも再開したいと考えています

現在の取扱店舗

百貨店、小売店(セレクトショップ)、呉服店、ホテルなど
・高島屋
・銀座伊東屋
・Supermama mit tobuhi
・Rin8890
・日本百貨店
・アマン東京
・箱義桐箱店谷中店
・三松
・葛西屋

藤井さん自己紹介動画

藤井さん製作工程動画

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